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2012.12.28 (Fri)

ひとり百物語 怪談実話集 夢の中の少女


ひとり百物語 夢の中の少女
(2010/7/2)
立原透耶

もしも死者に何かを伝えられるなら、
何を伝えますか、と問われたとき、
用意できる回答の種類は、
実はそう多くない。

死者が必死に伝えようとする言葉の、
なんと生き生きとしたことか。


【More・・・】

怖い話が好き、という嗜好は、
一体何なのかいまだによく分からない。
痛い話、グロテスクな話、不可解な話、などと
あえて細分化してみるなら、
苦手なものもあるし、嫌悪するものもあるけれど、
それら全てが大きくは属す「怖い話」には、
やはり吸引されずにはいられない。
ただどういう種類のものであれ怖い体験は遠慮したい。
可能な限り全力で回避する。
その原因となり得るものには近づかない。
決して自分に害が及ばないと分かっているからこそ、
実話系怪談も古典も同じように楽しめる。
それくらいの小心者からしたら、
聞くこと、集めること、書くことによって、
怪談が実生活に影響を及ぼしている感の立原さんが、
同じように「怖い話が好き」と言うことに迫力を感じた。
好きはいいけど御身大事に、と思いつつ、
前回もあったらしい守りの印の赤字印刷を発見して、
怪談はデンジャラス、と一人ごちた。

前回で101話語ったのにまだあるのかと思ったら、
さすがに今回は大部分が他の人の体験談で、
人から聞いた話、という怪談らしい曖昧さで覆いつつ、
立原さんの同僚とか弟さんとかの話は、
体験した人から直接聞いた話、ということなので、
よくある怪談実話集よりは各話を近くに感じた。
とはいえ著者の生徒の身内くらいまでいくと、
もはやそれは読み手にとっては又聞きの話、
距離の近さによる怖さみたいなものはなかったように思う。
また直接的に恐ろしいものを見た系の話も少な目なので、
背筋が寒くなるという意味でのパンチ力はあまりない。
あまりない、のだけれども、怖い話ではある。怖いと思う。
その感覚が顕著なのが一連のオウ先生の話で、
何か良くないことが起きている感がありありなのに、
その原因も本体もはっきりとさせることができず、
当然外側から何かしてあげることもできず、
会う度にひどくなっている様子を見守るしかできない。
多分立原さんに様々な助言をする専門家の方々も、
似たようなやきもきを感じているのだと思う。

数少ない「視た」系の話の中では、
第九十五夜「怪談後~怪談鍋」の浴室の女が、
画面のインパクトも相まってぞっとした。
四つん這いの髪の長い女というだけでぎょっとするのに、
振り向いたらそこに、というタイプのやつは、
後を引くので、つまり怖すぎるので遠慮したいけれど、
猫の真似をした、という部分がさらに化け物じみて怖い、
と思ってから、よく考えてみると、
これはもしや気配を察知された泥棒が、
とっさににゃーと鳴いてごまかした、のと同じ状況かと思い至った。
やべ見られた、猫の振りでもしとけ、的な。
そういう風にみるとどうやらベランダから逃走したのも、
可愛いような気がしてしまった。
実際振り向いてそこに四つん這いの女がいたら、
立原さんのように冷静に扉を閉めることもできずに、
凍り付いて女とにらみ合うことになりそうだけれど。
まあとりあえず今夜は風呂場で振り向かない、絶対に。

前回に続いて夢の話も多いけれど、
伝言やらお怒りやら352円返しておいてやら、
死んだ人からの何やら、の話が多かった気がする。
夢枕に立つ、という楚々とした感じの死者より、
怒ったり反対したり小言垂れたりが多くて、
こちらの世界に干渉してくることは、
おそらく未練がさせることなのだろうから、
何を言うにしろ良いことではないにしても、
一言言わせて!死んでますけどごめんなさいね!的な、
死んでまでも言わずにおれない感じが、
死人のくせに生命力溢るるようで和んだ。
恨みのような負の感情に囚われて、
ちゃんと逝けないものももちろんいるのだろうけれど、
一言言わせて!タイプの死人たちは、
ちゃんと生きて、残念ながら生き切れずに死んだからこそ、
おちおち逝っていられるか、と思っている気がする。
死者のバイタリティ、馬鹿にできない。

オウ先生や白い虫を見た作家さん、
死んだ兄弟とともにある人たち。
悪霊退散!で終わらないからこそ、
怪談は恐ろしい。

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