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2013.02.22 (Fri)

夏目友人帳 15巻


夏目友人帳15
(2013/1/4)
緑川ゆき

お互いを心配し合って、
ときにすれ違うことがあっても、
苦しいことを共に乗り越えて、
その全部の上に時間が降り積もる。

夏目もいつかそういう幸福を、
住む町と家と人の上に見られる時がくる。
その土台は着実に作られている。


【More・・・】

*ご注意
14巻の感想文を書き忘れていたようですが、
以下は前巻を読んだ上での感想文です。
内容に直接は触れていません。


夏目が藤原家に来る経緯が描かれる前は、
なぜ夏目がそこまで現在の居場所を大切に思うのか分からなかった。
藤原夫妻の優しさや学校での穏やかな日々は、
夏目のごまかしスキルが向上したことで、
奇異に見える行動を慎めるようになったからこそのもので、
この町自体が特別なわけではないようにも見えた。
けれど、両親のこと、夏目を迎えるための夫妻の働きかけ、
北本たち見えない友人たちの思い、などに触れた今までの特別編、
そして今回の特別編13を読んで、
夏目が現在の居場所に対して感じている温かさは、
何も夏目の側の変化、受け取り方だけのことではなく、
妖が見える見えないに関係なく、
さらには夏目が何か常ならぬものを見ていること、
自分たちとは異なる目を持つことを感じてさえいても、
真実夏目の存在を望み、大切に思ってくれる人々がいるからこそ、
この町はこの少年の特別になり得たのだと思った。
「優しいから」哀れな子供を受け入れるなんていう単純さではなく、
自分たちの大切な場所に外から人間を入れることについて、
夫妻がちゃんと悩んで、話し合って、考えてくれていたことが、嬉しい。
夏目が一方的に大切に思って守ろうとするのではなく、
遠くを見る夏目の目を横から見守っていてくれたことが、嬉しい。
10周年という文字を見て、そりゃ親気分にもなるなと思った。

人間の側からすると妖という存在は、
見える人と見えない人がいたり、
ふとすると薄くなるわどろんといなくなるわ、
触ることができても冷たい、あやふやな存在で、
そんな曖昧なものに心を寄せることの危うさを、
夏目も時々自戒しているけれど、
拓磨氏と三人の元・式の話を読んでいて、
妖の側から見ても寿命の違いだけではなく、
人というのは曖昧な存在なのかもしれないと思った。
基本的には自分たち妖を認識しない、
けれど見える者の中には殺し屋のようなのもいるし、
ごく稀にはひどく温かな手と目を向けてくる者もいて、
かと思えばある日突然「見えない」と泣き崩れ、絆を失う。
その、関係を築くにはあんまりの不安定さは、
夏目が妖に対して感じているそれと同じである気がする。
ならば拓磨を捨てられない銀露の頑なさや、
他の二人の痛々しい望みは、夏目のものでもあるのだと思う。
ニャンコ先生が言う「もの好き」は銀露と夏目と、
それからおそらくは夏目と関係を築き続ける自身のことなんでしょう。

紙人形を見つけただけでいてもたってもいられなくなったり、
口出しできないと思いつつ名取の裏稼業にはらはらする夏目と、
秘密をもつことを尊重しながらも、
それが危険である気配がすれば手出しも辞さない名取は、
本当に対等に双方向的に友人になったんだなあと思う。
心配されているという意味で言えば、式は主を心配しているし、
ニャンコ先生も夏目を危ぶんでいるからこそ、
三ツ皿の件であえて口を差し挟まなかったんだと思うけれど、
名取と式たちの間には契約があり、
先生と夏目の間には大きな力の差があって、
常に心配し合い、もちつもたれつという関係ではないように思う。
もちろん、だから彼ら人と妖が友人ではないということではない。
それは禁術らしい術を介して繋がりながらも、
妖たちがレイコの名と姿を長く思い続け、
子分などと嘯きながらその帳面に「友人帳」と名付けたレイコが、
多分ねじれの関係の友人関係だったのと同じで、
そういう形で思い合うことも一つというだけの話。
ただいまだ思われていることに無自覚気味な夏目が、
名取に優しさを向けられていることには自覚的に見えて、
二人の関係が、心がこじれてしまわなければいいと切に思う。

特別編13での夏目に直接関係するところ以外、
滋さんの塔子さんに対する、塔子さんの滋さんに対する、
静かで温かで、触れるのも躊躇われるくらいの思いが、
二人の表情やコマの端々から感じられて、
二人が越えてきた日々は具体的にはほとんど語られないのに、
あの少し大きな古い家の中に、
その時間が積もっているのが見えるような気さえした。
子供が好きなのに夫妻の間には子供がないこと、
家族の話をしたときの塔子さんの友人の眼差し、
夏目に対する接し方のぎこちなさなんかを考えると、
若い頃の「辛いこと苦いこと」がなんとなく透けるけれど、
相手がいなくなったらを現実的に考える年齢まできたとき、
そういうものの上に幸せが積もっていると思えるなんて、
もうため息もので素敵だと思う。
あなたがいなくては生きていけない、という熱と一緒に、
もしも私がいなくなったらあの人はと自然に思う塔子さん。
夏目と妖中心の話では恋愛色は皆無なので、
友人や家族とは少し違う温度の「あの人」が、
他人事ながら少し面映ゆく、けれど心地よかった。
夏目を含めて初めての家族、ゆっくりと時間を重ねていって欲しい。

名取さんの映画を見ている夏目の目が、
今の町に来たばかりの頃並に光消えてて笑った。

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