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2013.01.13 (Sun)

ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い


ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い
(2005/11/8)
西尾維新

背後には死屍累々、
行く方には無理難題。
けれど終わりはすぐそこだ。

君の手を引いて走ろう。
空いた片手に世界を抱えて。


【More・・・】

人生の目的とは何か、ともしも問われたなら、
狐面の男なら、世界の終わりを見ること、
人類最強なら、楽しいこと、
殺人鬼なら、生きていると思うこと、
そんな風に答えるだろうか、と想像する。
裸エプロン先輩なら、そんなものない、か。
我らが主人公が問い続けた「世界の終わりとは?」は、
おそらく冒頭の質問の反転なのだと思う。
そこに至れば終わり。それが目的。
ならば、かの先輩の世界が決して終わらないのに似て、
西東天の望みは決して叶わない。
世界の終わりは、彼の人生の終わりと同義で、
誰にも自分の人生の最後を見送ることはできない以上、
世界の終わりなど、到達できない目的でしかない。
内的世界の話を持ち出さなくても、自明のことだと思う。
それでも終わりを、目的を諦めないと言う男は、
折り合いという形で自己を抑えて生きるどの登場人物より、
実は主人公的気質を持っているのかもしれない、などと、
中盤から終盤、急に可愛げが出てきた男を見ていて思った。
鏡像に続き、魅力的な敵に出会えて良かったな、いーちゃん。

大団円と銘打ち、しかも裏表紙でネタバレしつつなので、
ひどい結末にはなるまいとは思っていたものの、
そう思わせながら、みんな死にましたもあり得るシリーズなので、
一応覚悟して最後まで読んだけれども、
最終巻に限って言えば全くの杞憂だった模様。
最後の賭けの前に身辺整理をする狐さんではないけれど、
全体として終わるための準備をしているような雰囲気で、
いーちゃんと玖渚、真心の鎖、父娘の確執、などなど、
そのままにして、なあなあでは終われない問題を
ちゃんと表に出して、当事者が正面から苦しんで、
その上でこれで終わりだ、と言うやり方は、
たくさんの登場人物を出して動かす物語として、
とても正しい気がして、好ましかった。
特に哀川さんと狐さんの件については、
大抵の場合「解決」が不可能な親子の問題の決着点として、
最強と最悪という肩書きなんて脇に置いた、
ただ父と娘の問題が融解する流れとして、
とても自然なもののように思った。
言い訳して諦めて受け入れる。そんな最強も良い。

「解放」に至った真心を絶望に至らせたものは、
いーちゃんが哀川さんを挑発するときに言ったように、
思春期を経験してきた多くの人間が、
振り返って苦笑いしてしまうような種類の煩悶で、
それを振り払うのは、実のところそう難しくないのだと思う。
それこそ戯言でも可能だっただろうし、
最強を巻き込んで満身創痍のバトルをしなくても、
もっと簡単な方法はいくつもあった。
でも、友達を助ける、と言うのなら、
そんなその場しのぎの手抜きはできなかったから、
いーちゃんはあの場を設定したんでしょう。
巫女子ちゃんたちのことを考えると、
この男が「友達」という言葉を使って、
誰かのために動き、何かを賭けようとすることが、
確かな変化、多分成長と呼んで良いものとして感じられて、
最終巻にして、いーちゃんのことを好きになれた。
時期を同じくして鏡像たる殺人鬼にも変化が訪れて、
誰もが次の段階へ向けて踏み出す様を見るようで、
そこに至って尚更次のない死者たちにまた悲しみが募る。

山奥の研究所での奇妙な共同生活の10日間。
普通にご飯作る最強と情緒不安定医者とか、
庭掃除する双子の殺し屋とか、洗濯物出さない最悪とか、
あと変態女子に怯える殺人鬼とか、
そういうのを見ていると、彼らのもつ様々な肩書きは、
正しい表記ではあるのだろうけれど、
やはりそれでも肩書きでしかないのだなあと思ったりした。
女子高生の惨殺死体が発見されることが恐ろしいニュースである世界から、
存在自体を恐れられる彼らのような人間も、
次元の違う別世界に生きている訳では決してない。
どっかに行っちゃうことなど、できない。
ご飯作って、食べて、掃除洗濯して、
共同生活の中でぶつかり合ったりするような、
そんな普通の世界に足をつけたままでいる。
おそらく共同生活を行う全員が抱えている「間違えた」感と、
それを普段は各々別の方法でこなしていることを思うと、
あの十日間の終わりが、物語の終わりとは別に寂しかった。
でもいーちゃんにとっての骨董アパートのように、
他の人間にも、おそらくこの物語の外に帰る場所がある。
故郷や、邸宅や、頼れる知人がいる。
それだけで、この世界は救うべきものである気がした。

物語りは終わりを迎え、世界はいまだ終わらず、
悲しみや苦しみは尽きないけれど、
奇跡は起きる。起き続ける。
君たちは、幸せになれ。

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