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2013.03.14 (Thu)

宇田川町で待っててよ。


宇田川町で待っててよ。
(2012/10/25)
秀良子

男に、女になりたいと思うことと、
異性の格好をすることは、
必ずしも直線で結びつかない。

女装する八代は男で、
百瀬の「あの子」も多分そう。
それで何一つ不足はない。


【More・・・】

未来を確信する瞬間がある。
ああきっと私は、と思ったそれが、
必ずしも現実になるわけではないけれど、
はるか先のある一点が見えたと思ってしまうほどの、
大きな転換点、革命的な瞬間というのはあると思う。
その瞬間に抱く喜びと諦念のようなものは、
その未来像が今の自分から遠いものであるほど、
甘い恍惚感を伴うような気がする。
百瀬の前で泣きながら八代が抱く確信は、
おそらくそういう種類のもので、
現実にその相手が百瀬から別の誰かになったとしても、
女装して男に抱かれて満たされる自分を知ったことは、
未来を確信させるほどのものだったということなのだと思う。
「かわいい」と言ってくれと執拗に求めるのは、
その言葉で肯定されることで、
女装とか抱かれることを嫌悪する現時点の自分を、
押し流したいと思うからでしょう。
自分の土台を壊し、体を軋ませながら変わる時、
普通は怖くて竦んでしまうけれど
それを肯定してくれる相手が一緒なら、痛みは甘くなる。
八代が羨ましい。決して百瀬がどうのではなく。

八代は女装して町に出たりしているわけだけれど、
巷で流行している(いた?)いわゆる男の娘ではないと思う。
際限のない話になってしまうと思われるので、
その辺の定義に踏み込むのはやめておくとして、
少なくとも女装している八代は、女ではない。
繊細な顔立ちで綺麗だし、色気もあるし、
顔を赤らめたりキョドったりはとても可愛いしで、
その出来は数多の女子を凌駕しているのは間違いなく、
おそらく全くその気がなかった百瀬がぼうっとしてしまうのも、
そりゃ仕方ないよな、というくらいではあるのだけれど、
どんな服を着ていても、八代は男に見えるし、
本人の自覚としてもそうなんだろうと思う。
「あっち側」に憧れていたという言葉は、
多分状況のそのままの意味でしかなくて、
「女の子」になりたいという気持ちとは別ものな気がする。
成り行き上百瀬から迫る形にはなったけれど、
つまるところ男を好きなる性質を持っていたのは、
百瀬ではなく、八代の方なんでしょう。
尻込みし、ときに後ずさりしながら、
そのことを飲み込んでいく過程にえぐられた。

百瀬が最初に気になったのは女装した八代で、
最初の頃に八代が指摘した通りに、
可愛い女の子である「あの子」が好きだというなら、
彼らの関係は発展のしようがなかっただろうと思うけれど、
百瀬は最初から「あの子」がクラスメイトの男だと気づいていて、
その上で「付き合ってください」とか言っちゃったわけだから、
不毛だ、とか言う物言いはただの悪あがきでしかない。
この服を着ろ、と百瀬が脅迫まがいに言うのは、
何も女装していなければ嫌だということではなく、
それが八代が望んでいることだと思っているからで、
「どーしたら喜んでくれんだ」なんて思いつめた挙げ句、
NAMAHAGEになっちゃたりする百瀬が可愛い。
女装状態で告られたりしてしまったものだから、
八代は百瀬の言葉を素直に受け取れなかったんだろうけれど、
改めて読み返すと、百瀬は常にまっすぐに、
好きなあの子に喜んで欲しい、可愛い姿を見たい、
それからキスと、その先も、とか、
言ってしまえば何の駆け引きもひねりもなく行動していて、
言葉の足りなさはあっても、表明する気持ちに嘘やごまかしはない。
純情好青年だなあ百瀬、前髪切って背筋伸ばせ。

ついぐらっときて誘ってしまった後、
百瀬の体が間近に迫って触れられたときの八代の反応が、
そりゃそうだよなあという感じで、
ムードとかは置いといて、なんだかとても納得した。
八代のあの反応は、好き嫌いの問題ではなく、
まさに肉食の獣に迫られるような、
とても動物的な恐怖なんだろうと思う。
自分より大きくて力の強いものに迫られるのは、
それが恋愛の場面だろうが怖いものは怖いでしょう。
内蔵を、つまりは内側を他人に触れられるのは、
命を掴まれるようなものなのだから。
その辺の怖さを初めてでも軽く蹴飛ばせてしまうくらいに、
相手を許しているというラブい関係も良いし、
何はともあれ勢いで動くというのも大いにアリだけれど、
迫られるのが怖い、と思うこと。怖がられることに、怯えること。
その両方を両者が一回ちゃんと自覚した上で、
それを乗り越えて先に進む方が、納得はできる。
なんて小綺麗に言ってみたけど、要は好みだというだけ。
そういうわけで百瀬ドンマイ。頑張れ。

作中色んな女物の服を着ている八代だけれど、
服としては一話目のストール巻いたやつ、
一枚画の雰囲気では最終話の見開きが好きだなあ。
服を主体に見ると八代の趣味が見えて楽しい。

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テーマ : 漫画 - ジャンル : アニメ・コミック


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