2017年08月 / 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

2013.04.15 (Mon)

ワニはいかにして愛を語り合うか


ワニはいかにして愛を語り合うか
(1992/1)
日高敏隆、竹内久美子

愛の言葉は一つじゃない。
でも言葉とわずかの身振り以外、
愛を伝える術はない。

膨らませる袋も踏むステップも共通の歌も、
何も持たないのが、我ら人間ホモ・サピエンンス。

【More・・・】

発情期のオス猫は大変だなあ、と
春野外で繰り広げられる合戦を見ながら思っていた。
メスを獲得するため、オス同士で争い、
かと思えばメスを選ぶことはできず、
事を為してもメスに手痛い餞別も貰うことになるなんて、
哀れ過ぎて猫の恋などと風流を言うのも悪い気がする。
その点ヒトには特定の発情期がなくて気楽だ、とか
それこそお気楽なことを考えていたこともあったけれど、
様々な種の愛の形、性の有り様の小話を聞いていると、
それをすぐさま人間に投影するのはどうかと思いつつ、
人は獣か否かの問いがぐるぐると新皮質を混乱させた。
もしも本当に愛だの恋だのが新皮質が見せる幻想で、
古い部分の脳が発する指令は太古から変わっていないのなら、
人と獣の間に違いはないのだろうと思うけれど、
肉体に自己擬態なんて奇妙なことをして、
ワニの脳の言葉を原型を忘れるほどに改変する人間、
その社会が獣のそれと同じ流れの上にあるというのは、納得しかねる。
ワニは、いわんや獣たるヒトはいかに愛を語り合うか。
その命題にどんな解答がつけられようとも、
臀部を模した女性の体幹前面上部の崇高さは変わらないわけだけれども。

目は口ほどのものを言う、とは言っても、
以心伝心なんてエスパーでなければ無理で、
基本的にヒトのコミュニケーションは言葉に偏っている。
あとは身振り手振りや仕草なんかが添えられる程度で、
こと愛、乱暴に言い換えて性交渉の相手探しには、
人間の場合、言葉以外の特定の所作はないように思う。
あ、あの男発情ステップ踏んでるわ、とかだったら面白いけれど、
鳥がダンスしたり、蛙や蝉が鳴いたり、
あるいはサルが尻を赤くしたりというような、
発情してますよ、相手探してますよ、的な信号がない分、
相手が自分の番いになる可能性があるかどうかの判断は、
各々の経験と技術の中で下すしかない。
そう考えると特定の時期、特定の音や匂いによって、
相手を探し、選ぶことができる動物というのが、
逆に羨ましいような気もしたけれど、
動物界には結婚相談所や婚活サイトはないし、
生来の体格や歌の巧さなんかが決め手にもなったりもして、
相手も求めながら、それを埋める戦法を見つけられなかった者は、
身の内の精や卵を腐らせて死ぬしかない。
愛を語らずとも生きて行ける気楽さを思う。

人間以外の生物の間で普通に見られるシステムこそ、
ヒトが失って久しい「正しい」ものだとして、
そこから外れる在り方を否定する考え方は、
とてもストイックで理想的だとは思うけれど、
動物たちの生と性の事情を色々と見ていると、
そもそも人間が自然界で異端になることからして、
少なくとも性に関しては無理なんじゃないかと思った。
避妊具なんて使わなくても、
生殖を伴わない性行為は普通に存在するし、
同性間、血縁間もある種の特殊例ではなく行われている。
包括適応度の考え方に則れば
個の性は必ずしも重要ではなくなり、
生殖を行わない個体も種にとって無用のものではなくなる。
それでも「自然の摂理」なるものが魅力的に聞こえるのは、
結局そこから外れて存在する我ら人間というものを、
それに従ってしか在れない獣から分離したいという、
それだけのものなのではないかという気がする。
などと人の立ち位置をめぐってひたすらぐるぐるした。

人の生と性がどうのという話から離れて、
単純に動物たちの性に関する戦略と戦法を眺めるなら、
全く上手く出来ているものだと関心しながら、
その全方向の熾烈な騙し合いにちょっと笑ってしまったりもした。
メスへのオスのアピールの話は色々な種で有名だけれど、
そのアピールには虚偽が多分に含まれているし、
オスは他のオスを牽制する一方で、時に便乗し、
メスは自分を良く見せようとするオスの中から、
本当に強いオス、有望なオスを見分けるべく吟味する。
他のものの本によれば相手を獲得してから、
確かに自分の遺伝子を受け継いだ子が生ませるため攻防の方が、
特に虫、トンボなどではかなりエグいことが行われいて、
それはもう人間ならどこの成人指定漫画だという感じなのだけれど、
ここで紹介されているものの大部分は、
いかに異性を誘因するかというところまでの話、
つまりいかにモテるかという話なわけで、
そう考えると鳴き交わしや糞尿バトルは平和的に思える。
赤く晴れ上がった尻や立派な角や特定の匂い。
何に対してそそられるかは種ごとに違っていて、
人間からしたら面白可笑しくも見えるけれど、
胸部、臀部、鎖骨、足首、腿、二の腕などなどなど?
笑ってやるのは止しておこう。

とはいえ、アピールのための努力と進化は、
適当な所で収束した方が良いような気がする。
やり過ぎは絶滅を招くと思うよ、オス諸君。

スポンサーサイト

テーマ : 読書感想 - ジャンル : 本・雑誌


21:26  |  複数著者  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://acon6960.blog40.fc2.com/tb.php/501-65bd8102

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |