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2009.08.02 (Sun)

芋虫


芋虫
(2008/7/25)
江戸川乱歩

虫を虐げるのは
少年たちだけの特性ではないようで。

無力な生き物は
無力だからこそ、愛おしい。

…らしい。

【More・・・】

体幹と命以外の全てをなくした男といえば
「ジョニーは戦場へ行った」を思い浮かべますが
須永中尉も戦争で多くをなくしながら
それでもまだ視力と家族である妻が残っている。
それさえもなく、
異国のベットの上で思考するしかないジョニー。
「芋虫」を読むと
どちらがマシなのか分からなくなってしまった。
どちら、とか考えるのは良くない気がするけれど。

もしも、時子ではなく、
須永中尉の視点で書いたなら
「芋虫」は全然違う話になっていたんだろうなと思う。
輝かしい功績と体を失う絶望、それから妻のこと。
彼にとって、特に帰還後の彼にとって最も心を占めていたものは
一体何だったのだろう。
もしかしたら、時子が思うほどには
中尉は妻の振る舞いなどどうでも良かったのかもしれない。
彼女があの夜したことさえも。
もしそうなら、時子があまりに哀れだけれど。
どうとも思われていないものに、あれほど執心して。
まるで報われない片思い。
その点では少女のそれと変わらない。

「芋虫」以外では、「白昼夢」と「人でなしの恋」が良かった。
理科室の人体模型が本当は本物、なんてのは
学校の七不思議の定番ですが
「白昼夢」の怖いところは、そこじゃない。
それは誰もその男の話を真に受けないところだと思う。
懺悔なのか、自慢なのか。
とにかく男は真剣に話している。
なのに、昼日中すぐそこにある真実に
誰も気がつかない。
それどころか、げらげらと笑っている。
真夜中に人体模型が走り回るよりよほど恐ろしい。

「人でなしの恋」は
タイトルのみ知っていて前から読みたかったもので、
恋をした「人でなし」が誰なのかの落とし所が
そうきたか!な感じで唸った。
土蔵での逢瀬が頻発する「奇子」よりも
門野の逢瀬は人の道とかいうものに背いている。
でも、多分、奇子を愛した人々よりもずっと
それはまっすぐな感情だったんじゃないかと思う。
時子とは逆で、実ったと言っていい初恋。

怪奇小説というよりも
ある恋の顛末というような印象が残った。

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