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2013.08.06 (Tue)

オコノギくんは人魚ですので①②


オコノギくんは人魚ですので1
(2012/12/25)
柴村仁

オコノギくんは城兼高校の一年生。
大きなリュックを背負って登校し、
放課後は部活に精を出す。
学校にも慣れ、クラス内関係は良好。
あと、人魚です。

陸に上がった人魚が、
悲劇の主人公でなければいけない理由はない。

【More・・・】

一クラス40人いれば、色々な奴がいる。
勉強できるの、運動好きなの、
どっちも嫌いなの、学校来るの来ないの、
病弱なの空気何それなの電波受信中なの一匹狼なの、
教室は40人分の事情で出来ている。
全員が友達だったわけでないけれど、
少なくともその40人がクラスメイトだった。
かつての教室を思い出しながら、
城兼高校1年1組の人魚とその級友たちを追いかけていて、
人魚であるがゆえの色々なトラブルは、
たとえば目が悪いとか、恐ろしく頭が良いとか、
だから席は前の方な、だからテスト前よろしく、というのと、
この子達にとっては何も変わらないんだろうなと思った。
もちろん萩山さんやエリオットが駆け回っている横で、
人魚に関わらないまま卒業する子もいて、
その彼らも含めた教室や学校、
というより人魚や透明人間が陸上をうろうろし、
白いもちもちの謎の生物がふわふわするこの町、
クラスに人魚がいてもその人魚が謎の生物にたかられても、
普通に驚きながら当たり前に対応する人々が好きになった。
何やら不穏なことが後ろで起きているようだけれど、
180kgを片手でいける女子高生をそっとしておける彼らなら、
なんだかんだ日常の中で切り抜けてくれる気がする。

人魚がクラスメイトにいるってどんな感じなのか、
なんて考えたこともなかったけれど、
外見は完全に普通の、少し世間知らずの男子高校生、
人魚らしい(?)ことはほとんど見せないので、
たとえ本当に自分のクラスにオコノギくんがいても、
多分「クラスメイトのオコノギくん」というだけだったと思う。
人魚というものがこの世間でどれくらいの存在なのかは、
人魚保護教会やら、信奉する系の人たちやら、
果ては聖域たる学校内に潜入監視員がいることやらを考えると、
一学年に三人というのは結構凄いことなんでしょう。
エリオットがそんな学校はここだけだとか言っているし。
ただ往々にして世間の温度と教室の中の温度は一致しない。
後から考えればあれ凄いことだったよなあということでも、
一端教室の中に受け入れられてしまえば、
芸能人だろうが財閥の何たらだろうが、人魚だろうが、
何年何組何番の某ズの一人でしかないし、
その後にやっとあーあいつ実は何々らしいよ、とか
その程度のことになってしまうものだと思う。
学校、教室は良くも悪くもそういう場所で、
擬態しているだけで実は全然違う生き物の人魚が、
陸で生きるためにまず馴染む場所としては正しいのかもしれない。
夢みたいに綺麗な背鰭、見てみたいなあ。

本当に好きで、入れ込んできたものができなくなることは、
好きな玩具と取り上げられることというよりは、
Love,Hate,Love.」の貴子さんがまさにそのまま言っているように、
愛したものに嫌われることに近いのではないかと思う。
ナツは飛び抜けて秀でた選手だったようだから、
貴子さんとは違うのかもしれないけれど、
「病気」という不可抗力で水泳を取り上げられたのに、
夢の中でオコノギくんの姿で自分を責めるのは、
水に顔を浸けられないという現象の原因を、
自分の中に探しているからなのではないかと邪推する。
水に拒まれる何かが自分の側にあるのだと、
もしもナツがどこかでそんな風に考えていたなら、
「セーフの水」と「アウトな水」が何で分かれているのか、
気付いても良いようなものなのに分からなかったのも頷ける。
まあいきなり「発症」した病気なので、
まさか水の方に原因があるなんて普通は思わないか。
②までで一応ナツの症状を引き起こす原因は見えたけれど、
水眠症とは何なのか、まるる堂に集う者たちは何をしているのか、
しろがねさまとは、城兼町の地下で何が起きているのか等々、
謎だらけなので、③以降に期待したい。
オコノギくんの尾鰭も見られたら重畳。

人魚のオコノギくんと主に水辺を中心とした物語だけれど、
クラスメイトにも、というかナツ自身についても、
いちいち突っ込みたい事情やら描写やらがあって、
周囲の人たちのスルースキルに感心しながらも、
おいちょっと待て今のは何だと何度も言いたくなった。
ナツの昼飯はなぜにいつも食パン六枚なのか。格闘家か。
その罠は女二人暮らしの用心ではない。殺しにきてる。
超重量級の人魚を運ぶ生物に抗って地面に食い込むものを、
女子高生の細腕と指だとは思いたくない。
あと早川家は一体何なのか。いつの時代のお家なの。
繊細な女子高生のよくある悩みみたいに書かれているけれど、
藍本さんの牙についても気になって仕方がない。
なんだろう、実は学年に三人もいる人魚は実は普通くらいで、
天狗(ナツ)などの人外もさりげなく通っている学校なんだろうか。
ただそんな中でもやはりオコノギくんは異彩を放っていると思う。
ナツの方こそよほど物騒な要素があるのに、
オコノギくんが鰭を引きずる音やクリック音、やたらな好奇心は、
彼のどこまでも素朴で普通な男子高校生の顔の横で、
妙な存在感、言ってしまえば不気味さを醸し出していて、
一番危険なのはこの子なのではないかと思ってしまう。
「擬態」という言葉に現象以上の意味がないことを願っている。

ナツ的には本当に心の叫びだったのだろうけれど、
ゴロゴロ転がるアザラシの横で海に吠える女子高生の図は、
笑うなという風が無理だと思う。
見られたのが人魚で幸運だった。

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