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2014.05.23 (Fri)

愛を喰らえ!!


愛を喰らえ!!
(2013/11/15)
ルネッサンス吉田

憎んで、憎んで、憎むことで生きて、
生きて、生きて、生きることで報いて、
その先で、その先で?

彼女は生きている。
ぎしぎしと軋みながら。


【More・・・】

怒る、嫌う、憎む、蔑む、よりは、
許す、好く、愛す、敬う、ことの方を、
おそらく多くの人間はしたいだろうと思う。
負の感情と言われるものは向けられるのは元より、
向けることにも多くのエネルギーを要する。
正の感情はまだしもエネルギーとなり得る交換があって、
それによって続けていける面もあるだろうけれど、
負の感情の交換はただひたすらに心を削る。
だから、憎むよりは、愛した方が生産的なのだと、
そんな風に思っていたのは、大きな間違いだったことを、
彼女の生を見ていて突きつけられた。
憎むことは消費ではなく、生産になり得る。
ガリガリと自分の心身を削りながら憎悪を燃やすことで、
働き、飯を食い、人と関わることを続けられる。
そういう風に何十年もを生きてきたことは、
彼女の望んだものではないだろうけども、
憎悪を飲み込んだり、なかったことにしていたなら、
その年まで保つことはなかっただろうと思う。
多分彼女は憎むことで生きながらえた。
一人の人間が内側に抱える熱量にひれ伏す思いがした。

彼女が男を憎む理由には疑問を投げかける余地がなくて、
憎むのをやめろとか、それではいけないなんて、
そんな言葉をかけることなどとてもできない。
もしも私が彼女と同じ経験をしたならば、
男女の別に関わらず、まずは相手を激しく憎むだろうと思う。
そして多分、あの手の経験から生じた憎悪は、
たやすく範囲を広げて、ときには殺意になるのだろうと想像する。
そう考えると、自殺でも他殺でもなく、
ああいう形での「復讐」、憎悪の発露は、
生を放棄しはしないという点においてだけは、
前を向いていると言えるのかもしれない。
まあだとしても、男に男を斡旋する仕事は、
復讐と定義しなければ、むしろ男の性を満たすためのもので、
彼女が憎んでいるものは、実のところ何なのだろうと、
流れていく彼女を追いながら考えていた。
あるいは憎悪とは、はっきりした方向性を持たず、
ただ溢れ、内側にたまり、淀んでしまえば、身を腐らせるような、
そういうものもあるのかもしれない。
そうなってしまわないために、流路が必要ならば、
やはり彼女は、生に向かっている。

憎悪を燃料に運営しているような彼女の生、
その生々しさと同居する血のにじむような渇きには、
何度もサンドペーパーをなでるような痛みを見たけれども、
おそらく同じ男への憎悪を抱えていたはずの彼女の妹の選択には、
頬を張られたような気分になった。
憎悪は確かに燃料になり得る。多分怒りも悲しみも寂寥も。
上手く取り扱えさえすれば、温かい何かと同じくらい保つかもしれない。
だとしてもそれを燃料にすることが、
自分と他人になんの陰も残さないなんてことはない。
生きてはいてもどこかを目指す思考はなく、
ただ自転車操業をするために操業しているような日常は、
機関と燃料、両方の成す所のせいであるように見えた。
一方で妹は、姉が通り過ぎてしまったどこかの時点で、
燃料を積み替えることを決意したのだと思う。
憎悪という燃料があまりに重い荷物であり、
それが機関を軋ませ、生産にも向かないのだということを、
気づくことができる何かがあったのかもしれない。
でも気づいたところで、多分その積み替えは容易ではなかった。
痛みを伴う努力をして、妹はそこに至ったんでしょう。
だからこそ、その努力もせずに、憎悪に殺されかけている姉が、
もどかしく、いっそ憎くさえ思えるのだ思う。
軽蔑の視線でもって、姉の尻を叩く妹はきっと優しい。

男への憎悪で形を保ってきた彼女は、人間が憎いとは言わない。
それは本心からの実感なのだろうと思う。
だからこそ、「いやだ」と思う時を捕らえて内田を飯に誘うし、
ときどき内田がはっとするように、無造作に気遣う言葉をかける。
「私信」での店長を見ていてもそれは同じで、
ボンヤリしていた頃に女性性を投げ捨てようとしたことの反転として、
男性性全体を激しく憎悪してはいても、
それは男である個人や、個人の男性性には向かず、
まして体を売る店の女の子たちに対しては、
相変わらずの仏頂面ながら、「優良店」らしい心配りをしている。
彼女のその、人や世界を憎まずにいる部分というのが、
憎悪に塗りつぶされた体の中で唯一残った部分なのか、
それとも憎むがゆえに生まれたものなのか、
どちらにしろ、彼女は憎んで憎んで憎みながらも、
「気をつけて」などと声をかけてしまう部分を失わなかった。
あれほど激しく憎悪を燃やし、死に続けながら生きているような彼女に、
そういう部分が確固としてあることに内田は気づいていたんでしょう。
そしてそれは、悲鳴を上げて夜中に起きさせるような過去を抱えながらも、
内田もまたそれに気づくことが出来るアンテナを、
折らず、あるいは捨てずに生きてきたからこそのことなのだと思う。
そう考えると、彼女を「あちら側」から引きずり出したいと願って、
内田はあの晩、手を握ろうとしたのかもしれない。
「自分だ」と彼女が思うまで、待ち続けた内田きみは偉い。

昔の話や私信を読みながら、
体は所詮体で、切り売りもオモチャにもできるけれど、
それでも容れ物である程度には、
魂のようなものと繋がっているのだと思った。

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テーマ : 漫画 - ジャンル : アニメ・コミック


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