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2014.11.26 (Wed)

餅巣菓さんに呼ばれる

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餅巣菓さんに呼ばれる
(2014/8/20)
イシデ電

とかくシャバは難しい。
おしゃれに料理、休日の過ごし方、
そして、恋のような何か。

餅巣菓さんは考える。
地下牢からはるか彼方、
宇宙の真理へ至るべく。


【More・・・】

初めて人を好きかもしれないと思ったとき、
一体何をどうべきなのか、本当に分からなかった。
見本とすべき物語には親しみがなく、
それを語ってくれる人生の先輩もいなかったから、
私は、ただ冷静たらんとして観察を始めた。
あの人のどこが好きなのか、なんて甘いものではなく、
かの人間のどこが評価すべき点なのか、という感じの、
文字通り、それは観察だったような気がする。
数ヶ月に渡る観察と気づきの列挙の結果、
その恋らしき何かは、熱を帯びる前に終わった。
今から振り返ってみれば、あれは恋の第一歩の行動として、
妙ちきりんな、それこそ錯乱の賜物だったように思う。
ただ本気だったことは間違いない。本気で、観察した。
餅巣菓さんの犬の誘拐などの一連の行動を見ていて、
その、何はどうあれ本気で相手を思い、思いつめ、
あらぬ方向に走り出してしまう、初めての恋の習性を懐かしみ、
また同時に、たまらなく彼女を愛らしく思った。
好きな人を思い、犬を盗み、尾行する餅巣菓さん。
彼女の本気が、表情や視線ではなく、その迷走から迸って、
香田この野郎と拳を握ること数度。
地下牢を出た彼女のシャバでの戦いにハートを盗まれた。

地下牢って何、と中盤で香田くんが突っ込んでくれるまでは、
この世界では地下牢出身とかザラなのかと思ったりしながらも、
まあ餅巣菓さんの可愛さと良い子さの前では、
そんなことは問題じゃないなとひたすらにやにやと思っていた。
もちろん地下牢出に限らず家督やら抹殺やらなんて経歴も、
今日本で事務員をやっている彼女に恋することとは関係がない。
それは間違いなく正しいし、そこで怯むのならば、
そもそも思いはそこまでだったということなんでしょう。
けれども、基本的に無礼千万、煮え切らない男・香田くんの格好良さ、
言い換えれば、餅巣菓さんと並んで良しと、
まるで保護者のような視点から評価したい点は、
そういう正論は正論と認めて怯む自分を罵りながら、
安易にその正論を自分のものにしないところなんだろうと思う。
ごく一部のお家に生まれない限り馴染みができないだろう言葉を、
その小さな身体にたくさんくっつけて育った餅巣菓さんは、
性格を別としても、確かに面倒臭い女の子には違いないし、
一番身近な感情は呪いだと言う子からその部分を切り離して、
残りが本当だなんて言って付き合うことも多分誠実なことではない。
香田くんは、餅巣菓さんを思う時自分の中に生じる怯えや、
彼女を面倒臭いと思う気持ちから目をそらさなかった。
それだけ真摯に、彼女から向けられる気持ちを受け止めて、
卑怯者が多い脳内会議で議論したのだろうと思う。
恋をしてよかった、とは、なんて素晴らしい呪いの言葉だろう。

一方で香田くんを思うあまり尾行技術を上げ、あらゆるものをぶん投げ、
パプリカの所長の脳内パレードのような嘔吐をする餅巣菓さんも、
ただ恋に戸惑う初心な娘というわけではないのだと、
透明の壁に取り囲まれて泣き崩れる彼女に対して、
香田くんが投げつける言葉を聞きながら気がついた。
地下牢を出てからのそれなりの年月の中で、
おそらく脱出の直後よりははるかに彼女はシャバに馴染んでいて、
生活を自分の力で問題なく続けていけるようになっているし、
社長を始めとした周囲の人々のおかげで他者との関係も築けている。
でも、誰にも呪われず呪わずとも済む場所を得て、
もういいのだと自分に言い聞かせながらも、
彼女はまだ呪いの中にいたあの年月に縛られているように見えた。
恋に、というよりは、恋がもたらし得る波乱全てに対して、
彼女が怯えを見せるのは、香田くんを思うことも含めた今の暮らしを、
本当に大切に思っているからこそでもあるし、
多分父母や家を呪う気持ちもまだゼロではないのだろうとも思う。
ただどちらにしろそれは餅巣菓さんの事情でしかなく、
あからさまな言動の挙句「恋など」なんて言葉で、
相手を傷つけたことの言い訳にはならない。
今自分の周りには全く何の壁もないのだということに無自覚で、
一人で恋をし、一人でそれを拒絶して、透明の壁を見出す彼女は、
自覚的にヘタレまくっている香田くんよりも、
見ようによっては卑怯者だったかもしれない。
アオハルも良いけれど、聞いてくれる人は他にも沢山いるよ、餅巣菓さん。

少しばかり大胆で正直だったけれども、
笹原さんは全く何一つ恥じるべきことはしていないし、
2年と少々二人の付き合いが続いたのも、
多分彼女の努力の賜物なんだろうと容易に想像されて、
餅巣菓さんと笹原さん、それぞれの胸中を思うと、
香田くんの下腹にもう数発いいのをお見舞いしたくなる。
とはいえ少なくとも、餅巣菓さんに心情を吐露した時点では
香田くんはちゃんと笹原さんを思おうとしていたようだし、
それだけの付き合いの後に香田くんを振れるくらい笹原さんは芯を得て、
そして我らが餅巣菓さんは目標を順調に達成していったわけで、
餅巣菓さんと香田くんの関係に限って言えばまわり道だったけれど、
その数年は三人の誰にとっても無駄ではなかったのだと思う。
一晩で139のお呪いをやってのけた彼女が、
七年間で1000程度で留まった上であの自信に満ちた顔なのだから、
彼女を包んでいた、包まれていると信じていた壁は、
多分もう完全に消え去ってしまっているんでしょう。
ならば、煮え切らないまま煮詰まってしまった感のある香田くんなど、
彼女の前ではヘタれさせてももらえないだろうな、などと、
これからの二人、そして餅巣菓さんが真理に到達するまでの間の二人を、
完全に餅巣菓さん贔屓で想像して、またにやにやした。
願わくばとても良い子な気がする妹との関係も、
どこかの時点で穏やかなものになってくれていたらいい。

郵便局が好きとか意外と表情豊かとか、
餅巣菓さんの魅力は様々にあるけれど、
「塩への信頼」が絶大というのが素晴らしいと思う。
良い塩は、至宝です。

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テーマ : 漫画 - ジャンル : アニメ・コミック


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