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2009.09.28 (Mon)

虚空の旅人


虚空の旅人
(2008/7/29)
上橋菜穂子

ままならないものは、
たくさんある。
生きる場所の如何に関わらず。

新ヨゴ皇国の皇太子は、
それをよく知っている。

【More・・・】

大人を拒否するして、
子どものままでいる、なんていう選択肢は、
多分チャグムには最初からなかったんだと思う。
その自由を自覚する前に、
誰かの子としてではなく、王の子として
命を奪われそうになってまった。
他人の助けでやっとつないだ命も、
世界の理みたいなもののために窮地に立たされる。
十一歳のチャグムの子供時代は
あの一冬の穴ぐら生活だけだったのかもしれない。

だからこそ、
十四歳になったチャグムの成長と決意は、
あんなにも凛として見えるんだろうと思った。
感情を露わにすることはおろか、
よろめくことさえ自由にならない身でありながら、
出来得る限り手を伸ばす。
立場の外の自由を求めて、ではなく、
大きなものの狭間で犠牲にされる人々に向かって。
かつてそうしてもらったことを想いながら。
繋がっている、ということが、
バルサ不在の物語の中で、とても嬉しかった。

それでも、チャグムはまだ成長の途中にいるようで。
助けたいと伸ばした手を支えるために失われる命。
その存在に気づき、茫然としたりする。
納得したはずの不自由さに苛立って、
美しい異世界に飛んでしまいそうになる。
静かな悪戦苦闘ぶりが痛々しくて、
でも、着実なその歩みを応援したくもなります。
彼が王になった皇国を見てみたい。

それから、相変わらず、周囲の人々の濃さにも圧倒されたり。
キャラクターとしてというより、存在感そのものに。
周囲の、と言うのがはばかられるくらい、
その人生、立ち居振る舞いに厚さがある気がする。
新ヨゴ、サンガル、カンバル、ロタ、タルシュ…。
国があって、それぞれに治める者と民とそこから外れた者とがいて。
上橋さんの描く、匂いたつような世界に、
なんだかすっかり魅了されてしまっている。

ちなみに私は、
人を諌められないくらい、
わりと無鉄砲な若き星読博士が好きだったりします。
危うさではチャグムといい勝負だと思う。
精々気をつけて生き残って欲しいものです。
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テーマ : 読書感想 - ジャンル : 本・雑誌


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