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2009.10.16 (Fri)

箪笥のなか


箪笥のなか
(2005/9/7)
長野まゆみ

年経た物は化けるというけれど、
舌も出さず、足も生やさず、
もちろん人を食べたりもしない、
蝶の飾り金具が美しい赤箪笥なら、
我が家にもぜひ置いておきたい。

多少ウワバミでも目をつぶります。

【More・・・】

古い家具や家がときに気味悪く感じられるのは、
具体的に何か恐ろしいものが宿っているからではなく、
おそらく、それが経てきた時間と想いの前に足がすくむから。
そして、確かに積み重なっているはずのそれを
決して今からは推し量ることができないから。
得体がしれない、だから気味が悪い。
でも、「私」の家にやってくる赤い箪笥は、
なんだかかわいい。
確かに年経て、得体のしれない部分は多いけれど、
色んなモノを呼び寄せたり、かくまったりする様は、
まるで子供のような大人、みたいだと思った。

締まらなくなったり、逆に開かなくなったり、
酒を飲み干してみたり、嫁をとってみたり。
「私」には同居人はいないと言うけれど、
箪笥はもう立派な同居人だと思う。
しかも気まぐれで、面倒ばかり引き起こす同居人。
でも、引き起こすのが怖いことじゃない辺りがいい。
色んなモノや人が訪ねてきて、
その半分はタマシイだったりするわけですが、
でも、害をなすものはいない。
箪笥と思い出話をするかのように、
ちょっと立ち寄っては消えていく。
それは怖いというより、寂しい感じがした。
通り過ぎていく人が誰も立ち止まろうとしないことは、
相手がこちらの住人でも、あちらの住人でも、
何の違いもなく悲しいことだと思った。

そんな箪笥や彼岸の住人と気が合ってしまう「私」の弟。
箪笥が面倒事を起こすたびに、
どれどれと当たり前の顔をして見に来る彼にとっては
箪笥も奇妙な訪問者も、息子も姉も妻も、
全部同じ地平にあるんでしょう、きっと。
息子が異物を飲み込んだかもしれないと言うのと同じ口調で、
箪笥に嫁を探すとか言う。
見えないものを見る人なのに、
なんだろう、この軽やかさ。
こちらとあちらの境をひょいと飛び越える。
でもちゃんと妻と息子のいるこちらを生きてもいる。
妙なアンバランスさをもつ貝好きの弟が好きになりました。

全体としてなんか同じ感じのあったような、と考えていたら、
梨木香穂さんの「家守綺譚」でした。
古い家と、そこにやってくる妙なものたち。
その共通点で雰囲気は似ていますが、
妙なものが出てきながらも、
これは家族とか家の話なんだろうなという気がした。
一つの家族が老いて、また新しい家族が育っていく、その過程の話。
祖父母はもういないし、両親は少し寂しげだけれど、
弟の家族にはこれからがある。
「私」も新しく住んだ古い家で、人やそれ以外と繋がりを育ててる。
その平凡さは確かに幸福なんだと思う。

抽斗にあるはずのない過去のものは入っている光景が、
野比さんちの息子の机に重なったりもしましたが。

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