2017年08月 / 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

2009.10.24 (Sat)

神の守り人 下 帰還編


神の守り人<下>帰還編
(2009/7/28)
上橋菜穂子

巨大な力は
小さなものを守りもするし、
動かしもする。

守られていること。
踊らされていること。
それに気がつくことの幸不幸は、
向き合う者次第なのだと思う。

【More・・・】

翻弄されてる、と思う。
バルサも幼い兄妹も、
自分を鳥瞰する者だと思っているシハナも。
国とか世の成り立ちとか、
自分より大きくて、全体を見ることさえ叶わないものに、
みんないつの間にか踊らされている。
それに気づいて抗う者もいるし、諦める者もいる。
少しも気づかない者だっているけれど、
その結果として描かれた絵は、あまりに悲しいと思った。

アスラがサーダ・タルハマヤになった後、
妹を止めるために目に見えない樹を上るチキサ。
その怯えが、なんだか新鮮だった。
異形のものに選ばれた妹とは違って、
チキサはいい意味で平凡で、素朴な少年。
だから、人殺しを無意識に肯定してしまう妹を諌たり、
それでも力に飲まれる彼女の前に立つことを恐ろしく思う。
肩に刺さった矢の痛みで、樹から落下する。
特別勇ましくもないし、賢いわけでもないけれど、
当たり前のことをしたいと願いながら、怯えと戦う。
特別な呪術や体術を持つ者たちの中で、
必死に妹を想う少年を応援したくなった。
だからこそ、妹は目覚めない方が幸せかもしれない、なんて
チキサがそう思ってしまう結末が、やるせなかった。

時系列的にはちょうどチャグムもサンガルで奮闘しているはずで、
そのうちにバルサと皇子が
お互いのことについて語り合う機会があったら、とか思います。
同じ時期に違う場所でそれぞれに戦っていた、ということは
それを互いが知らなくても、なんだか心強い。読んでる方は。
登場していない場所でもちゃんと生きてる登場人物。
そういう人々の存在が感じられると、
ぐんと登場中の人々にも厚みが出る気がする。
単純に嬉しいってのももちろんありますが。
その点で、上橋さんはやっぱりすごい。
こんなにたくさんの人を動かしているのに、
薄っぺらになるどころか、相乗的に厚くなる。
いやはや、えらい物語です。

消えたシハナ一行はそのうちにまた出てきそうだし、
帝国の脅威はあちこちにちらついてるし、
この先も波乱必至な気がしますが、
バルサ自体はこの先どこへ行くんでしょう。
チキサ兄妹とはどこかで別れるでしょうが、
稼業を続けて旅に出るのか、タンダの小屋に戻るのか。
見習い呪術師と星読博士好きとしては、
ぜひヨゴに戻ってほしいところですが。
まあ、気の向くままにとはいかなくても、
バルサにはいい加減好きに生きてほしいものです。
選ばざるを得なかった選択はもう十分でしょうから。

次の旅の始まりを待つことにします。


スポンサーサイト

テーマ : 読書感想 - ジャンル : 本・雑誌


15:43  |  上橋菜穂子  |  TB(1)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

高い文章力と巧みなストーリー展開。
読みごたえがありました。
トラックバックさせていただきました。
藍色 |  2010年10月20日(水) 11:41 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://acon6960.blog40.fc2.com/tb.php/85-12390b4d

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

神の守り人帰還編 上橋菜穂子

アスラは自らの力にめざめ、サーダ・タルハマヤ“神とひとつになりし者”としておそろしい力を発揮しはじめる。それは、人の子としてのアス...
2010/10/20(水) 11:27:51 | 粋な提案

▲PageTop

 | BLOGTOP |