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2009.11.03 (Tue)

世界の果て


世界の果て
(2009/5)
中村文則

暗い、と言われるのは、
嫌というより、気に障る。
悔しい気さえする。

それは多分、誰もが抱えながら
誰もが隠しているその部分を、
隠し切れていないということだから。

だから、隠さない人間に苛々もする。

【More・・・】

彼らは迷っているように見える。
こちらに留まるか、
彼ら自身しかいない非日常に生きるか。
ある者は迷いの末にその境を超え、
ある者は最初からそちら側にいる。
でも、どちらを選んだとしても、
誰も満ち足りた顔はしない。
相変わらず、違う、と思っている。
ここじゃない、と。
なんだか中学生の時分の閉塞感を思い出した。

帯には「ほの暗さの快楽」とありますが
ほの暗い、かというとどうなんだろう、とか思います。
確かに明るくはないですが、全体としてはそう暗くもない。
たまに滑稽だったりもする。
「世界の果て」の中の犬を捨てに行く男の部分なんか、
題名の割に明るいなと思ったくらいで。
まあ帯に疑問を抱くのはほとんどいつものことなんですが。

五つの短編のうち、割と肌になじんだのは、
「戦争日和」と「ゴミ屋敷」。
ほかの三篇に比べると、
あちらとこちら、その境みたいなものがはっきりしている気がする。
はっきりした「ほの暗さ」というのは、何だという気もするので、
その意味ではその快楽もよく分からない二篇だけど。
つまるところ、そういう短編集の中でも
はっきりした二篇を選ぶあたり、
そもそも自分は「ほの暗さ」というものが
気に入らないのかもしれません…。
白か黒か、とは言いませんが、
せめて灰色、と分類できる色にして頂きたい、のかも。

妻が死んで動かなくなった男の話「ゴミ屋敷」
これはもう明るい話、でいいと思う。
全編にわたって悲しみと虚無感が満ち満ちているけれど、
ゴミと言っても鉄筋だの家具の一部だのを積み上げて、
空に向かって成長する男の家は、
なんだか希望みたいなものに見えた。
世界との交叉を拒絶して、ゴミで出来た希望を作る男。
だから、それが安定を失って崩れたとき、
それで男は社会復帰したとしても、悲しいと思った。
ずっとあれを作り続けられたなら、
それがあの男の幸福だったような気がした。

自分の仕事に疑問のようなものを抱いて、
分かりやすい暗さをまとって部屋を探す男。
その彼に向かって、正々堂々「苛々する」と言う不動産屋。
彼らのやりとりは妙なことになっている。
主に不動産屋のせいで。
死にたがっていそうな男の部屋に
輪っかにした縄を吊るしておく、とか
どんな不動産屋だ、と思う。
でもその実、自分の死刑台を製作する男よりも
不動産屋の方が中に暗いものを持っている気もする。
「戦争日和」という言葉の不穏さなんか目じゃないほど、
不動産屋は暗い部分を持ってる。でも慇懃無礼。
彼の乾いた明るさが、いっそ気持ちが良かった。

雨の日は嫌いじゃないですが、
しとしと、は趣味じゃないなと思った一冊。

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