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2009.11.07 (Sat)

パンク侍、斬られて候


パンク侍、斬られて候
(2004/3/18)
町田康

斬って生きてきた侍も
刀も振りかざせない侍も
百姓も女房も丁稚も
阿呆のような戦場で
その瞬間を迎える。

阿呆らしくて厳粛な、その瞬間。


【More・・・】

侍で牢人で、しかも超人的刺客。
歯に物着せぬ物言いと同居する、世渡りのための口先三寸。
妻が「いた」過去、そしてそれを語らない姿勢。
と書くと、掛十之進は主人公染みている。
なのにどうしてこうも、っぽくないんでしょう。
周りで起きていることの馬鹿らしさのせいなのか。
それとも、掛が流されるような役回りだからか。
何にしろ、この人はどうも小物臭い感が否めない。
まあ、主人公然とした主人公なんて、
この話の中には不要、というかいても邪魔なのかもしれませんが。
数千の猿と馬鹿が主役で、エスパーが笑い転げて人が爆発する戦場に、
何が他に要るかっていうと、
もうお腹いっぱいですとしか言えないわけで。

それでも主人公、のはずの掛ですが、
ずば。から転がり始める事態に巻き込まれ、
あっちに偉そうにしてみたり、こっちにへつらってみたり。
そんなこんなでたどり着いた場所が
始まりと同じなんて、なんだか哀れになった。
そもそも始めたのが掛本人なわけで、
自業自得といえばそうなんですが。
後半にかけての人死に(と猿死に)があんまり多くて
せめて誰か救われてくれないかな、とか期待してたもので、
なんだか虚しくなった次第。

混乱した事態の中でたくさん死ぬわけですが、
その死の全部の容赦ない感じには、妙に納得しました。
誰も彼も潔くなく、見苦しいししょうもないし、
小胆な者も卑怯者も、阿呆も猿も
最後までそのまんま死んでいく。
そりゃそうだよなと思う。
美しい散り際なんて、あり得ない。
そんなものを感傷的に与えられたりしないのが小気味良かった。
彼らの人生について語られる部分も辛辣なことといったらないけれど
だから当然の死に方だ、ということではなく、
一段下がることも、上がることもなく
ただ生と死が全くフラットに繋がっている感じが、
肌になじむような気がした。

主人公たる掛でさえその範疇に収めながらも、
おそらく唯一の例外は、オサム。
掛が超人的刺客なら、オサムはまさに超人。
猿でありながらまるで人の大臼よりもまだ常識を逸脱している。
習い性のように怯え、それでも恩を忘れず
なのに爆笑のうちに殺戮を行うオサムにも
その場にいた者と同じように無残な死が訪れるけれども、
その瞬間彼の胸の内に去来するもの、
というよりそれが去来するだけの余裕のある死の瞬間自体が
書き手の感傷のような気がした。
まあ、この例外がないと、納得ずくとはいえ虚しすぎますが。

これだけの混沌の末に
最後の二行の爽やかさは、
超人的だ、とか思った。

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