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2009.11.22 (Sun)

血液と石鹸


血液と石鹸
(2008/09/26)
リン・ディン

愛の言葉は
簡潔な方がいいらしい。

けれど、
短い言葉で伝わるのは、
それで分かる耳をもつ相手に対してだけだと思う…。


【More・・・】

右手と左手の親指と人差し指で四角い窓を作って、
切り取るべき風景を決める。
絵を描くためのそれと同じような手段で、
短編小説が作られるとしたら、
分かりやすくていいだろうな、とか思った。
絵画と違って、少なくとも心得のある言語で読むのだから、
あとは切り取られたその窓を覗きこむだけでいいはず。
そこにある風景を見知っていてもいなくても、
何かを感じることができるはず、なのになあ。
どうも小説は、そんな風に作られるものではないらしく、
言葉という共通項を持っていても、
そもそも絵と同じように、書き手と同じ目は持てやしない。
手で窓を作るのは、結局私ではないわけで、
今回は切り取られた風景どころか、
その窓枠さえも遠くに感じてしまった。

37の短編からなる短編集。
短いものは一ページにも満たない。さくさく読める。
ただ、どれを読んでも、
なんというか、どこに目を向けたらいいのか分からなかった。
ぎょっとするような話は一つもないと思う。
運転手から聞いた、ゴーストタウンが生まれた理由。
ある夫婦と土産のチーズをめぐる話。
無学な囚人と一冊の辞書の話。
そんな理由が、と思う。そんな理由で、と思う。
思って、で、それで終ってしまう。
あまりに短いので、何か読み落としたのかと、読み直してみたりもする。
でも、同じことの繰り返し。
多分、この話群を「分かる」には、
決定的に何かが自分に欠けているんだと思う。
そんな風に無理やり納得しておきます…。

とは言っても37も入っているので、
印象に残ったのをいくつか挙げるなら、
「!」と「自殺か他殺か?」
それから「ただいま上映中」の「ザ・クルー」の項、でしょうか。
言語と世界の認識についての話(だと思う)ものは
「!」の他にいくつかありましたが、
「!」の中で語られるホー・ムオイが言語の力を信仰するようになる経緯だけは、
なんだか少し分かるような気がしました。
分からない外国語が飛び交う中にいるときの孤独感と、
そこにほんの一言、意味のわかる言葉を聞き拾ったときの快感。
ムオイを支えていたのは、おそらくその延長にあるものなんだろうと思う。
まあ、結果的に詐欺師なわけですが、その自覚もないんだろうなあ。

「自殺か他殺か?」も外国語にまつわる話。
中学生くらいの英語の授業では、
ひたすら教科書の英文をみんなで繰り返したりしていたものですが、
それを母語にする人たちからしたら、異様な光景だろうなと思います。
日本語学校の授業風景を見てて、ぎょっとするのと同じように。
「私」の隣人も真面目に勉強しているんでしょうが、
状況としてはかなり妙。せめて読むものを代えればいいのに。
「ザ・クルー」はちょっと見てみたくなった。
ただ退屈なだけの仕事を、ただ撮って、それで映画にする。
480分なんて、映画としてなめた長さをしている上に、
おそらく、恐ろしく退屈なんでしょう。
日常は、退屈でなんぼってことか。

「BLOOD and SOAP」、「血液と石鹸」
soapって、石鹸か、と当たり前のことを思い、
日本語に毒されまくってる自分を発見しました…。

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